萩生田文部科学相の“身の丈”発言に批判が集中したことで、2024年導入の延期・見直しが決定した、“大学入学共通テストに代わる英語試験としての英語民間試験の導入”ですが、そのメリット・デメリットを改めて見直してみたいと思います。
また英語民間試験の今後についてもまとめてみました。
大学入学共通テストへの英語民間試験導入のメリット・デメリット
英語民間試験導入のメリット
・言語の4技能「読む・聞く・書く・話す」がバランス良く鍛えられる。
・大学入学後の英語学習のハードルが下がる。学びやすくなる。
・外国人とのコミュニケーションが取りやすくなる。
・国際的なコミュニケーション能力が高まるので、グローバル社会での適応力・競争力が高まると見込まれている。
・テストを挽回する機会が一つ増える。従来のセンター試験、2021年から始まる大学入学共通てテストでは年に1回のみの機会だが、民間試験だと年2回(高3の4~12月)受けられる。
英語民間試験導入のデメリット
・しくみが複雑である。受験大学・学部、入試形式、受験する民間試験が複雑に絡み合っている。志望校の選定に制約が増える。
例① | 大学・学部、入試形式によって、民間試験も使えるもの、使えないものが異なる。 |
例② | 大学・学部の入試形式によって、運用の仕方もさまざま。
A:民間試験の一定以上の点数を入試の「出願資格」とするもの、 など運用のやり方が様々。 |
例③ | 通う高校の方針によって受ける民間試験が左右される場合もある。GTEC採用を決めた高校だと英検はじめ他の民間試験は使いにくいケースなど。 |
例④ | なので志望校や受験校を決める際の情報収集の負担が受験生にとって重い。 |
・経済、地域などの格差が問題となる。
例① | 受験機会が公平でない。 地方(特に離島やへき地)だと地元で受験できず、受験地へ行くために宿泊費・交通費も負担しなければならない。 全国で均等に受験できるわけではなく、都市部ほど有利。 |
例② | 経済的負担が重くなる。 年2回の受験料だけで最大5万円以上するものもある。経済力のある家庭ほど有利になる。 民間試験は繰り返し受験することでコツがつかめ点数も上がるので、高3になるまでに多く受験できる者が有利。 |
・入試で特に重大な採点の公平性確保が難しい。スピーキングやライティングの解答に個人差が生じるため採点基準のブレが生じやすく、採点担当者の十分な確保も不安視される。
・特にスピーキング・ライティングに言えるが、採点時間が足りない。大学入学共通テスト実施から国公立二次試験や私立本試験までの日程が短く、数十万人の受験生の採点を公平性を確保しながら終わらせるには絶対的に時間が足りない。
・3年生前半の時期(4~7月)は部活動や学校行事と試験が重なって受験できないケースも出てくる。
・先着順で受験の日時・場所を決めるケースもあり、必ずしも希望した日時・場所で受験できない恐れがある。
デメリットの方が多い?
こうしてみると、英語民間試験が大学入学共通テストの代わりに導入された場合、メリットよりはデメリットが多いですね。
格差の問題、採点の公平性確保や時間不足の問題も見過ごせませんね。
欠陥を多く抱えていたのに見過ごされ、「実施ありき」で進められてきたと思わざるをえません。
確かに今後の国際化社会に向けて4技能を身に着ける重要性もわかるのですが、受験生にとっては恩恵が乏しくなっていたようにも感じました。
英語民間試験の今後は?
大学入試における英語4技能評価の在り方について、3月中旬に自民党の文部科学部会はいくつかの提言をしました。以下はその概要です。
・4技能の評価は英語民間試験活用も含め大学ごとに判断。
・大学が入試の実施・評価の主体となるべきで、4技能評価に関しても大学側の積極的な取り組みを期待。
・大学入学共通テストでも4技能評価が理想だが、当面は各大学の二次試験での民間試験の活用が現実的。
・民間試験の活用に関しては地域・経済格差が生じないよう政府が予算措置など講じる必要がある。
「重要視する4技能評価は、大学実施が理想だが、民間試験活用が現実的」との内容ですね。
地域・経済格差の問題がクローズアップされ政府もしっかり認識できている点は良いことだと思います。
英語民間試験は、どうしても都市部の方がアクセスもよく受験回数も多く受けられ有利ですから。
昨年11月、萩生田文部科学大臣の発言もあり混乱もありましたが、国内の大学入試での4技能評価、英語民間試験を活用する流れは基本的に変わらず今後も増えていくと思われます。
実際に、各種英語民間試験を入試にさまざまな形で活用している大学は年々増えていますね。
まとめ 大学入学共通テストへの英語民間試験導入のメリット・デメリットと今後
入試における4技能の評価試験のあり方がどうなるにせよ、今後の大学受験生に必要になってくるのは、コストもかかりますが早めに準備・対策して4技能をバランスよく鍛えていくことだと思います。
早い時期から英語に興味を持ち慣れ親しんで、語学力を高めていくことが若い世代に切実に求められる時代になったと感じさせられます。